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軽く会釈をされて、私もそれに返し、今度こそ足早に歩き出す。
「なーかぞーのさん」
……が。
案の定、すぐそばにいた高迫さんにすかさず腕を掴まれて、歩みを妨げられる。
「……」
連絡を全て無視していたため、その軽いトーンの声すら恐ろしく感じる。
正直、マッハでダッシュして逃げたい。
「はい」
吉川さんも横にいる手前、変な態度を取るわけにもいかず、無理やり笑顔を作って返すと、
「俺はアナタを待ってたんだけど」
と、首を傾けて、可愛くもないアプローチをされる。
「そうですか。すみませんが、あいにく、今日は今から予定があって急いでいるもので」
それに対し、嘘をスラスラ吐いて、彼の手を結構な力で剥がそうとする私。
「じゃあ、その予定断って。それが無理なら、その予定の場所まで送っていくから、済むまで車で待ってるよ」
「いえいえ、そんな、悪いですので」
2人とも笑顔で話しているが、それとなく険悪な雰囲気を察したのか、吉川さんが、
「高迫。中園さんは予定があると言っている。手を離せ」
と、私にとってかなりありがたいお言葉を、高迫さんに投げてくださった。
「やだ。俺はこの人に話があるから」
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