番外編②

5/15
前へ
/20ページ
次へ
結局終わったのは10時半で、自宅マンションに帰り着いたのは11時前。 車を降りてエレベーターに乗り、首を回しながら自分の階で下りる。 7時頃に事務所にあった茶菓子を軽くつまんだだけだったから、腹が鳴った。 冷蔵庫に何か入っていたかを思い出しながら、俺は自分の部屋の鍵を開け、ドアノブを回した。 「……」 まずはじめに目に入ったのは、女物の靴。 そして違和感を感じたのは、部屋の灯り。 ……あれ? と思いながら、思い当たる人物はスペアキーを合鍵代わりに渡したままの彼女しかおらず、俺は心持ち急いで靴を脱ぎ、中へ入った。 そして、その予想通りの姿が目に入る。 「みち」 のさん、と続けようとして口を噤んだ。 ダイニングキッチンのテーブルで、折りたたんだ自分の両腕を枕代わりに顔を伏せている彼女が、静かな寝息を立てていることに気付いたから。 簿記の問題集が下敷きになっている。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4562人が本棚に入れています
本棚に追加