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「……」
そして、彼女の頭の斜め上には、ラップしてある和風ハンバーグらしきものと、茶わん蒸しらしきもの、ポテトサラダ、そして空のお椀とお茶碗。
「ハ……」
まるで安いドラマでよくありそうなシーンに、思わず笑みをこぼした。
一度断ったにもかかわらず、彼女も明日仕事があるだろうに、なんでまた平日に、俺が遅いと分かっていて……。
そう思いながらも、こみ上げてくる嬉しさに緩んだ顔を戻せず、コホ、と小さく咳払いをする。
鞄を空いている椅子に置き、脱いだ背広を彼女の肩にかけると、改めてテーブルの上を見る。
彼女が作ったのだろうか……。
ラップを取ってまじまじと見て、それ以外考えられないことに、また口角を上げる。
鍋を開けると味噌汁も準備されていて、ここで料理をしていた彼女の姿が目に浮かんだ。
起きる気配のない彼女。
俺はその頭を軽く撫でて、鍋を温め直した。
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