番外編②

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「ごちそうさまでした」 いまだ起きぬ斜め前の彼女をチラリと横目で見て、小さな声でそう言い、シンクに食器を下げる。 どうしたものだろうか。 無理やり起こすのも酷な気がする。 「みち……」 彼女の目の前の椅子に座り直し、その髪の毛をひと筋すくう。 「結月」 サラサラと重力に従順に落ちるその髪を眺めながら、優しく声をかけてみるが、やはり返事はない。 今度は少し力を込めて頭を撫で、再度その名前を呼ぶ。 「へへ……」 すると、目を閉じたままの彼女が、口元をゆるませて、微かに笑った。 そして、かけていた俺の背広をぎゅうっと握り、 「……よ、しかわ、さ……」 と、至福の顔でその生地に頬ずりをした。
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