サンパウロにて

7/22
前へ
/490ページ
次へ
依頼主の喫茶店を訪れた二人は、客に成り済まして店内の様子をうかがっていた。 父母と娘が営むアットホーム的な喫茶店。 客の入りも良く、普通に流行っているようだ。 「ね、パフェ食べても良い?」 「え、朝ご飯食べたばかりなのに?」 「あら、デザートは別腹でしょ?」 「まあ、そうですが……。食べても良いですけど、お腹壊さないで下さいよ?」 は~いと返事をしてメニューを見る。 どのパフェにしようか、嬉しそうに選んでいた。 シャスタはそんな彼女を見つめながら、最強の女でも普通の女の子なんだと新たな発見をしていた。 三番めのシルビア・ハウエル。 末っ子で家族に溺愛されていた、甘えん坊の幼い少女のような女性。 それでいて、前世の記憶を持つ彼女が見せる大人の素振り。 このギャップが堪らない。 初めて愛したお淑やかなクレルモン。 長い時を共に過ごした凛々しいマクファーソン。 どちらも同じシルビアだが、あえて過去形で言いたい。 貴女達を愛していたと……。 「ね、貴方は何にする?」 「え?あ、アイスティーで。」 ハッとしたシャスタに首を傾げながら、フルーツパフェとアイスティーを注文する。 .
/490ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加