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 クニがサクラの下に立つ生徒にいった。 「なんだよ、偉そうに。そっちの1番様は、ずっとだんまりかよ」 「気にさわったら、すまない」  この菱川浄児が、100万人を超える東日本の15歳で1番優秀なのだ。断雄は驚きの目でルームメイトを見つめていた。ジョージは低い枝先をつまむと顔の近くにしならせて、サクラの花をのぞきこんだ。 「人は1番とか200番とか勝手に順位をつけていうけど、この花に順番なんてあるのかな。どの花もただこの瞬間を咲き誇っているだけじゃないか。ぼくは……」  春の日がさすと、ジョージの目はほとんど灰色の淡さになった。頬も血管が透(す)けて見えるほど白い。色素欠乏症なのだろうか。 「人間には順位などつけられないと思う」
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