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「ぼくはテルでいい」  テルは横をむき、親指の先で示した。掲示板の隣りには、満開のサクラが枝を広げている。その枝の下で酔ったように花の雲を見あげる長身の生徒がいた。髪は漂白したような明るい茶色で、やけに肌が白かった。背が高いので、端正(たんせい)な礼服がよく似あっていた。 (この人にはなにかがある)  断雄は直感した。人とは違うなにか、あるいは人より優れたなにか。クニがおどけていった。 「で、彼が菱川浄児。あいつもジョージでいいってさ。それで驚いたことに、なんと1番なんだって」  東島進駐官養成高校は徹底した学力主義だった。一番でも成績のよい者が高く評価されるのだ。入学試験の成績は、すべての合格者に伝えられている。この高校の合格者は、地方都市なら地元の新聞に名前が載るほどの名誉である。その240人中の1番なのだ。 「ねえねえ、逆島くんて、何番?」  馴(な)れなれしくクニがいう。タツオの声がちいさくなった。
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