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 春の嵐のような強風が、開いたままの大講堂の戸口から吹きこんできた。サクラの花びらが儀礼用の制服に身をつつんだ新入生240人の頭上に降りかかる。白い制帽に薄くれないの花びらが散っていく。  入学式は始まったばかりだった。 進駐官の儀礼用の制服は、金ボタンが前に7個、両肩には金のモールが輝いている。若者たちのあこがれの的だ。この学校の偏差値は80を軽く超え、全国から最優秀の学生が集められている。    壇上では東島(とうとう)進駐官養成高校校長、狩野永山(かのうえいざん)が声を張りあげていた。胸は色とりどりの勲章(くんしょう)でにぎやかだ。この高校の校長は進駐官としては、少将クラスにあたる名誉職だという。
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