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「つーかさ…王子の企画ならサクラいらないんじゃないの?」
「んー?そんなの当たり前じゃん。大神って面白いこと言うよね、ははっ」
王子っていうのは姫野の彼氏。
美男美女ってこれのことを言うんだなぁって、清々しいほどに思える二人。
付き合い始めたのは半年ぐらい前だったかな。
「彼氏紹介するから!」って鼻息の荒い姫野に連れて行かれたライブハウス。
「ひーちゃん!」
アタシより1オクターブは高いんじゃないかっていう高く美しい声で遠くから姫野に手を降る男がいた。
ひーちゃんとか呼ばれてんのか姫野。
その男は、目からラブラブビームという光線が出せそうな取り巻き女子たちに笑顔をふりまきながら、それでいてスルスルと人の波をかわし、アタシたちのところへ到着した。
古着屋の店員ということと仲間内でお遊びのバンドを組んでいるということしか聞かされていなかった。
どうせチャラチャラした奴でしょ?肩書きがそう言ってる。
なのにその予想は大きく覆された。
チャラチャラってか…
これじゃキラキラだよ!
うっ…眩しさで目が痛い。
「約束通り、唯のしんゆー!連れてきたよ!」
「ははっ、ひーちゃんの親友なんて苦労しそうだね」
「あ、ちょっとそれどういう意味ー!」
あははうふふと笑いあう目の前のバカップル。
え?何これ、既に帰りたい。
でもなるほど…これはなかなか…
姫野が男紹介したいだなんて、どんな天変地異かと思ったけど。
わかるなぁ。これじゃ王子様だわ。
サラっサラの金髪。
端正な目鼻立ち、細い指、スラッとした長身。
加えて人懐っこそうなこの笑顔!
紹介したくもなるよな、そりゃ。
姫野は知り合った19の頃から男を絶やしたことがない。
だけど、ただの一度も
「彼氏を紹介…」なんてことはなかった。
今までの彼氏はそれはそれは酷いもので
毎度毎度、愚痴を聞かされるアタシの身にもなってほしいほどだった。
男を見る目がないんだよ、なんて。
恋愛経験の乏しいアタシにはそんな大層なことを言える筈もなく。
更に、相手がどんな酷い男であろうと、毎回涙を流すこの親友に追い討ちをかけるようなこともできなかった。
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