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「同じ日本の言葉なのに、和歌とか意味まったくわかんねぇし、覚えらんない。
現国も古文も、はっきり答えが出ないのって苦手」
数学が得意なスバルらしいな、とちょっと笑いながら、私は鞄からちょうど昨日図書室で借りた和歌集を取り出した。
「…私は好きだなぁ。
昔の人も今と変わらず悩んだり喜んだりしてたんだなぁ、って…」
「ふーん」
スバルがちょっと体を寄せて、私の手元を覗き込む。
そして、和歌に目を落として、おかしそうに吹き出した。
「ははっ、これ、深田っぽい」
「どれ?」
大きくて長い指が差す歌とその下に書かれている意味を見て、私も思わず笑ってしまった。
『来むといふも 来ぬときあるを 来じといふを 来むとはまたじ 来じといふものを』
( 来るって言っても来ない時があるのに、来ないって言ってるのを来るかも…なんて待ったりしないわよ!そうよ、来ないって言ってるんだもん!待ったりしないんだからねっ!フンっだ!)
…なんだか、可愛い。
でも、きっと待ってるんだよね。
元々、古文は好きだったけれど、先生を好きになってからは歌の気持ちが前よりもよくわかるような気がする。
誰かを想って眠れないくらい切ない気持ちや、その人のことを考えるだけで心が温かくなる気持ち。
全部、先生が教えてくれたもの。
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