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一瞬、ドキリ、とした。
立ち止まって向かい合う私たちの横を通り過ぎる車のヘッドライトが、辺りを明るく照らし長い影を残して走り去っていく。
日に焼けた彼の精悍な頬が一瞬明るく浮かび上がって、私はハッと息を飲んだ。
光に照らされてできた影がスバルの輪郭を濃く縁取って、私を見つめて苦しげに揺らめく真っ直ぐな瞳が見える。
いつもと違う彼に、胸がざわざわして息苦しい。
「…スバル、どうしたの?」
一歩、歩み寄って覗き込むように彼を見上げると、頭に置かれたままの手が一瞬ビクッと震えて、街灯にぼんやりと照らされた瞳の奥で何かが動くのが見えた。
「…遥」
戸惑うような掠れた声が響いて、スバルの手が頭の上から滑るようにゆっくり落ちていく。
その手が震えているような気がして、鼓動がドクン、と大きく脈打つ。
「…スバル?」
不安になって、私は思わず手を伸ばして指の出ていない袖先でそっと彼の胸に触れた。
きゅっと目が細められて、震える彼の指先が恐る恐る私の頬に触れたその時、ーーー後ろから聞き慣れた低い声が聞こえた。
「…浅田?」
瞬間、ビクッとスバルの手が揺れて、弾けるように私の頬から離れる。
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