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細胞が反応するように、ドキン、と心臓が跳ね上がった。
スバルが顔を上げて、私の肩の向こうにすっと視線を移す。
それを目の端に映しながら後ろを振り向くと、大沢先生が立っていた。
「…せんせ、どうして…」
会えると思っていなかった先生に会えた嬉しさと気恥ずかしさで、頬が熱くなっていく。
じっと見つめる視線の先で、彼はゆっくりとこちらに向かって歩み寄ってきた。
ワックスで固められた髪がふわりと風に揺れて、その間から見える綺麗な瞳が真っ直ぐに私を捉える。
「…車で通りかかったら、姿が見えたから…。
…どこか、行ってたの?」
「はい、スバルのうちで勉強して…」
「…ふーん」
先生は、無表情な顔で興味なさげに頷いた。
それから、ふっと私の後ろに目を移して、スバルに向かってにっこりと笑顔を作り、
「…相川、ありがとね。
後は俺が家まで送るから。
それと…」
言いながら、もう一度ちらり、と私を見る。
ゆらりと揺れる眼差しにドキッとして、私は思わず息を飲んだ。
じっと見つめられて、鼓動が早くなっていく。
「…浅田。
服、…返したら?」
…あ。
先生の言葉にハッとして、ファスナーを下ろそうと慌てて胸元に手をかけると、スバルはその手を掴んでそれを止め、
「いいよ、風邪ひくから着て帰れよ」
私を見下ろして優しく目を細めながら言って、顔を上げて先生を見た。
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