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先生はしばらく何も言わずに、じっと私を見つめた。
綺麗な瞳に真っ直ぐに捉えられて、また頬がじわじわと熱くなっていくのを感じる。
「…せんせ?」
戸惑う私の呼びかけに、無表情だった先生の顔がふっと柔らかく綻ぶ。
彼は少し目を細め、そっと手を伸ばしてフード越しに私の頭を撫でた。
「…雪ん子みたい」
「え?」
聞き返すと、先生はそれには答えずに黙って私の目を見つめたまま両手でそっとフードを脱がし、ゆっくりと髪を撫でて梳き流した。
街灯に照らされた先生の顔はうっとりするくらい綺麗で、私を見つめる瞳に映り込んだ光がゆらゆら揺れている。
…目、離せない…。
私たち二人だけが世界から切り離されたように、大通りを行き交う車の音が随分遠くに聞こえた。
何も言わない先生に、心臓がドクンドクンと鼓動の速度を上げていく。
温かい指先がそっと頬に触れ、顔にかかっていた髪を掬って耳にかけて、そのまま耳たぶをゆっくりとなぞる。
…ひゃっ。
きゅっと体を縮こませると、先生はハッとしたように私から手を離した。
「…行こう」
歩き出した彼の後をついて歩きながら、心臓のドキドキを落ち着けようと私は胸元を押さえてふう、と息を吐いた。
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