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「あれがその灯台」
先生が窓の外にさっき見えた白っぽい建物を指差した。
「…中に入って昇れるけど、後で行ってみる?」
わ、昇れるんだ。
私は頷いて、灯台の上の方を見ようと身を乗り出すようにして体を傾けて覗き込んだ。
とん、と頬が先生の肩に触れる。
…わわっ。
こちらに体を寄せて窓の外を覗いていた先生に寄りかかるような体勢になってしまって、私は慌てて体を起こした。
シートに体を深く埋めて俯くと、彼はクスッと笑って片手を私のシートの頭の上に置いて、もう片方の手をゆっくりと伸ばしてそっと頬に触れた。
…わ、わわ。
ドキン、と心臓が大きく脈打つ。
先生とシートに閉じ込められる形になって、反射的にきゅ、と体が竦む。
「…ほっぺ、熱いね」
囁くような声が響いて、見上げると私を見つめる先生と目が合った。
間近くに見える熱っぽい瞳に、また鼓動がドクン、と跳ね上がる。
「…外に出た時に寒いから、上着、脱いだ方がいいよ」
言って、指の背でもう一度優しく頬を撫でてからそっと手を離す。
車内はすっかり暖まっていて、厚手のパーカーでは少し暑いくらいだ。
はい、と頷いて私はファスナーに手をかけた。
けれど、袖から出ていない指先ではなかなかうまく掴めない。
仕方なくぶかぶかの長い袖を捲ろうとしたその時、先生の手が私の袖先を掴んでそれを止めた。
え、と思って顔を上げると、
「…おいで、してあげる」
先生は肩に手を添えて、シートから私の体をそっと起こした。
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