数式1

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心臓がまだ高い音を立てて騒いでる。 先生はしばらくの間、優しく髪を撫でてから、シートにぐったりと寄りかかる私の腕を持ち上げてパーカーの袖からそっと引き抜いた。 だらり、と力なく落ちた手を先生の指が優しく撫でる。 「…大丈夫?」 運転席に戻り、おかしそうにクスクスと笑う先生から視線を逸らして俯くと、座席と私の背中に挟まれたスバルのパーカーが目に入った。 …あ、くしゃくしゃになっちゃう。 もちろん洗濯して返すつもりではいたけれど、どうしても気になって、私はなんとか体を起こしてノロノロとした動作で背中からパーカーを抜き取り、丁寧に畳んで膝に置いた。 ふと、寒い中を半袖で帰ったスバルの姿が頭を過る。 …風邪、ひいてないかな。 痩せ我慢している負けず嫌いな顔を思い出して、思わず口元が緩む。 「…何、考えてるの?」 抑揚のない低い声に顔を上げると、先生が運転席のウィンドウに頬杖をついて私を見ていた。 なんだか恥ずかしくなって、私はパーカーを撫でながら誤魔化すように言った。 「あ、いえ、別に…」 「…ん、そう…」 先生は興味なさげに短く返事をした後、シートから体を起こして、 「…ね、浅田」 囁くような甘い声で私の名を呼んで手を伸ばし、そっと頬に触れた。 温かい指先に、またドキン、と胸が高鳴る。
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