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先生は指の背でそろりと何度も撫でた後、大きな手の平で優しく私の頬を包んだ。
そのまま、そっと親指で唇に触れ、輪郭を確かめるようにゆっくりとなぞっていく。
「…せんせ」
胸がぎゅうっと締めつけられて、息苦しさに唇から吐息のような声が零れる。
先生は少し頬を緩めて、静かな声で言った。
「…大人のキスの練習、しようか」
「…え?」
聞き返す私に先生はふ、とわずかに目を細めた。
そして、問いかけには答えずに唇から指を離して、私の頬を両手でふわりと挟んで持ち上げる。
真っ直ぐに視線を合わせて見つめるチョコレート色の綺麗な瞳に、戸惑う私が映っているのが見えた。
「…口、開けて」
「…あ、あの…」
先生はちょっと首を傾げて、戸惑う私の唇に親指をかけて、そっと口を開かせた。
「…んっ」
ビクッと体が震える。
開いた唇の間から親指が差し込まれて、私はびっくりして思わず口を閉じた。
クチュ、と水音がして、舌に先生の指が触れる。
彼はゆっくりと指を動かして、固まる私の口の中をかき混ぜていく。
…大人のキスの、練習…。
恥ずかしさと戸惑いと言い表せない感情がない交ぜになって、私は胸が苦しくてぎゅっ、と目を閉じた。
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