11159人が本棚に入れています
本棚に追加
「…浅田」
角度を変える為にできた唇の隙間から、掠れた声が静かな部屋に響く。
吐息混じりの囁くような甘い声と息苦しさに、頭の芯が痺れてクラクラしてしまう。
ソファを背に床に座り、先生は立てた足の間に座らせた私に優しく何度も口づける。
先生のシャツの胸元をきゅっと掴むと、彼は私の唇に触れていた自分の唇を少しだけ離した。
そして、その一瞬で息をしようと口を開きかけた私に、覆いかぶすようにまた唇を重ねる。
頬から滑らせて髪の中に入り込んできた先生の長い指が、頭を抱えるように私を捉えた。
「…んっ、…ふ、…あ」
わ、私の声、…自分じゃないみたい。
唇から漏れる自分の声の甘さに恥ずかしくなって、私はシャツを掴む手にぎゅっと力を込めた。
何度抱きしめられても、何度キスを重ねても、全く慣れなくて。
頭が真っ白になって、どうしていいかわからなくて泣き出してしまいそうになる。
「…息、苦しい?」
唇を離して、先生は笑い混じりの声で訊いた。
そっと目を開けると、チョコレート色の瞳がすぐ近くに見えて、少し細められたそれが私を映して甘く揺れる。
…あ。
きゅう、っと胸が締め付けられる。
恥ずかしさと息苦しさで、私は俯いて先生の胸に額を擦り付けて大きく息を吐いた。
ーー私はまだ、キスの最中にうまく呼吸すらできないでいた。
彼は私の背中を優しく撫でながらクスッと笑って耳元に唇を寄せ、
「…少し、練習しようか」
最初のコメントを投稿しよう!