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そして、片手で私をぎゅっと抱き締めながらもう片方の手を頬に当て、ちょっと顔をずらして耳元に口を寄せる。
「…浅田」
…ひゃっ。
掠れた声が耳元で響いて、思わず体がビクン、と震える。
先生はちょっと笑って、きゅっと体を縮こませた私の耳に唇を押しあて、触れたまま囁いた。
「…早く、慣れてね」
笑い混じりの甘い声が、胸を締め付ける。
ドクンドクン、と鼓動がうるさいくらいに騒いでる。
また涙が出そうになって、先生のシャツをきゅっと掴んで、頬を擦りつけた。
「…はい」
小さな声で返事をすると、背中に回された腕にぎゅっと力がこもる。
ふわり、とシトラスの香りがした。
…先生の、香り…。
胸がきゅうっと音を立てて窪む。
先生から伝わる温もりに、ゆっくりと体が溶けていくような気がした。
先生はしばらく何も言わずに私を抱き締めた後、はあ、と大きなため息を吐いた。
「…浅田、テスト勉強してる?」
「えっ」
突然、現実に引き戻されて思わず顔を上げると、彼は私の体をゆっくりと起こした。
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