第1話

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「いらっしゃい義兄さん」 一年ぶりに見た義兄は去年より髪が短くなり 精悍さが増して 男の色気を強く振り撒いている感じがした 「晃二(こうじ)久しぶり 変わりはなさそうだな」 ちょっとはにむように笑う義兄さんを見ると 相変わらず胸がずきんと痛む 「風呂を沸かしてあります 汗を流してください」 「ありがとう 車を運転して来るだけで汗だくだよ」 義兄さんに着替えの浴衣を渡し 僕は風呂上がりのビールやつまみを座敷に用意した 山の斜面に建つこの古い日本家屋は戸を開け払うと 涼しい風が抜ける造りになっており 山の蝉時雨のざわめきを風が微かに運んでくる
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