第1話

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翌日 二人だけの法事をひっそりと終えて家に戻ると 裏山の滝を見に行かないと義兄さんに誘われた ずいぶん前に二人で行った事を覚えていてくれたのだと ただそれだけのことなのに 胸の鼓動が高鳴るほど嬉しかった 降りしきる蝉時雨の中を 他愛も無い事を話しながら 義兄さんと歩いて行く幸せを噛みしめ滝へと向かう 「記憶だともっと大きかった気がするが…」 滝壺の前に佇み滝を眺めている義兄さんに 今年は渇水だからその所為かもと言うと 記憶していた物なんてのは どんどん変わってしまうのだなと 義兄さんはしみじみと呟いた 「姉の事は思い出すのですか?」 ついそんな 不躾な事を聞いてしまい すみません忘れてくださいと言うとかまわんさと しゃがんでる僕の頭をくしゃりと撫でた
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