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小論文、面接、と出来るだけのことはやり終え
自宅へと電話をかけた。
「もしもし?お母さん?うん、問題なく終わりました。うーん、やるだけやったって感じかな。
まだ面接中の子いるから、終わったら一緒に学校に戻るね。うん、ありがと。じゃーね。」
母親は「お疲れ様。気をつけてね」と言ってくれた。
南高校の推薦を受けた同級生の女の子が私の他に2人いて、彼女達はまだ面接が終ってなかった。
学校では通常通り授業が行われている。
こちらが終わり次第、3人で学校に戻らなければならなかった。
先に終ってしまった私は暇を持て余し、校門脇の花壇の縁に腰掛けて校舎を見上げていた。
風が吹く。
夏ほど潮の香りはしない。
頬を掠めれば、ピリッと痛みに似た感覚が広がる冷たい風だった。
まーだかなーっ
と正面玄関に視線を戻した時、
ちょうど出てきた女の子と目が合った。その子は私の顔を見て、そのままこっちに歩いて来た。
「あの、瞳子ちゃん・・・?
楠本瞳子ちゃん、だよね?」
そう聞いてくるその子の顔に、私もなんとなく見覚えがあった。
「あ・・・小学校の時の!日野さん?」
私が微かな記憶を手繰り寄せて名前を口にすると、嬉しそうに笑って目の前まで駆け寄って来た。
「そう!日野夏実だよ!覚えててくれた?!懐かしいーねー、こんなとこで会うなんてびっくり!」
彼女は、小学5・6年生の時の同級生だった。
中学に上がる時、学区が分かれてしまい別々になりそれっきりだった。
本当に、こんな所で会うとは思ってもみなかった。
「小学校卒業以来だねー!元気?てゆーか、よく分かったね。声かけてくれなかったら気がつかなかったよー。」
「絶対会ったことある!って思ったら瞳子ちゃんなんだもん!本当びっくりした。瞳子ちゃんも南高校受けるんだね。」
「日野さんもね。面接どーだった?」
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