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浮き足立った新入生気分も、少し沈静化された5月のある日。
桜なんてとっくに散ってしまったし、授業も本格的にスタートして何日も経つ。
自分がもう高校生になったのだという、当たり前のことが日常になった。
たぶん私は何も考えていなかった。考えていたとしても、「ねむいな・・・」くらいだったと思う。
自分の教室がある2階への階段を登り切り、階段から廊下の境目に足を踏み入れた瞬間
ボーッとした頭に突然、ものすごい声が飛び込んで来た。
「トォォォォコちゃぁぁぁぁぁーーーーーん!!!!!」
びっくりし過ぎて、その単語が自分の名前であることにすぐには気づけなかった。
顔を上げると、廊下の遥か遠くからこちらに向かって全力疾走してくる1人の女の子と
その突進物の声とスピードに釘付けになっている生徒達が、
立ち尽くす様子が目に写った。
「げ」
階段を登り終えて、僅かに疲労が残る私の足もまた、他の生徒同様止まったままだった。
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