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「どうしてこうなったか説明しろ。」
威圧的な低い声が生徒会室内に響き、私は生理的な冷や汗が背中を伝うのを感じた。
「あ、え・・・ええと、ですね。」
私は恐る恐る顔を上げ、目の前に立ちはだかる人物となんとか目線を合わせる。
ギロッという効果音がぴったりな、射抜くような鋭い視線でこちらを見下すその顔は、どこまでも冷徹で再び背中に冷たいものが走った。
これは・・・仁王だ。
中学の修学旅行で訪れた京都の、どこかのお寺で見た、仁王像そのものだ。
禍々しさすら感じるオーラを背後に纏った星村先輩は、生身の人間を軽く凌駕する恐ろしい形相で、やはりこちらを睨んでいる。
「は、話せば・・長くなるんですが・・。その、かくかくしかじかイロイロありまして・・・」
私がしどろもどろ、なんとか声を絞り出してそう答えると、
「おい。」
という、先ほどから更に1オクターブ低くなった不機嫌な声が響き、私は反射的に口を閉じた。
「オマエは馬鹿なのか。
だから、そのイロイロを説明しろって言ってんだよ。
俺が寛大に聞いていられるうちに話した方が身のためだぞ。」
「は、はい!・・・すいませんでした!!」
私は即座に頭を下げる。
が、先輩のこの高圧的な態度のどこをどう解釈すれば「寛大」と受け取れるのか、はっきり言ってさっぱり分からなかった。
現在、私はナツミと共に生徒会室内でかなりの窮地に立たされている。
私達2人は並んで椅子に座らされ、机を挟んだ目の前には鬼の形相の星村先輩が立ちはだかっている。
その少し後ろには苦笑いを浮かべながら心配そうにこちらを見るヨウヘイ先輩の姿があった。
そして、私達の前の机には1つのダンボールが置かれ、星村先輩の手にはなぜか、北海道銘菓であるあの有名なお菓子の箱が握られている。
一種異様な光景だ。
一見しただけでは、今この場で何が起きているのか理解出来る人はいないだろう。
「事と次第によってはこいつは渡せねーぞ。」
星村先輩は手に持っていたお菓子の箱を私の前にかざし、2、3度横に振って見せる。
箱の中からは、カサカサっという音が聞こえた。
そんな・・・殺生な・・・。
私は恨めしい目でお菓子の箱を見る。隣のナツミは完全に萎縮してしまって、怯えた表情で机の一点を見つめていた。
私が覚悟を決めて再び口を開いた瞬間、目の前にあったダンボールがガサッという音と共に大きく揺れた。
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