第1話 緑風

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「ナツ・・!!」 本当は 「ナツミ」と言おうとしたのだけれど、私が全部言い終わるより 私の腕がすごい力で掴まれる方が早かった。 掴まれた腕が痛い。 目を見開いて、走って来たからだろうかゼーッゼーッ肩で呼吸を繰り返す様子は、 はっきり言って怖かった。 「どうしっ・・」 そしてまた、 「どうしたの?」と聞き終わるより 彼女の口から 「ヤバイのっ!!!!」 という言葉が出る方が早かった。 「え・・、な、何が??」 今度こそ全部言えた。たった一言だけれど。 「いいから、ちょっと来てっ!!!」 完全に面喰らっている私の腕が、引っ張られる。 と、そのまま廊下の先まで走り出した彼女につられて、私も半ば引きずられるように走っていた。 途中、「何?」と声をかけた私の質問は完全に無視された。 尋常じゃない。たぶん、廊下で出来る話じゃ無いのだろう。 廊下の端まで走らされたと思ったら、そのまま右側の教室に入って行き さらにその教室の一番後ろの角まで行った所で、ようやく私の腕は解放された。 この教室は、選択科目の授業で使われるフリーな教室で 当然朝のこの時間に生徒の姿は無い。 1組から4組、のそれぞれの教室は今駆け抜けた廊下の左側に並んでいる。
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