第1話 緑風

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その人気の学校に、私が行こうと決めたのは中学3年の夏休みー。 当時の私は成績こそ優秀だったが、これと言って明確な進路を考えてはいなかった。 進学する高校をなかなか決められなかった私に、担任の先生が勧めてくれた学校説明会。 とりあえず自分の実力で狙える高校の説明会に幾つか参加してみなさい。とのこと。 提案された説明会は3校あって、その中の一つが南高校だった。 7月の末くらいだったと思う。 他にも受験を希望する同級生数人と共に、説明会に訪れた夏の日。 南高校は私の地元の駅から6駅程電車に揺られた場所にある。 最寄の駅からの距離は15分くらい、と言葉で聞く分には問題無い立地だった。 しかし、実際行ってみて最初に抱いた感想は 「この学校にはぜってー通わねーっ」だった。 「え・・・?ここ登るの!?」 学校までの道程の4/5は登りの坂道だったのだ。 駅から少し歩いた所に、突如現れた坂道が学校にたどり着く一本道で、 かなりの急坂を同級生とヒーヒー言いながら登った。 みんな口々に 「ありえねー」 「なんでこんなとこに学校作ったの?」 と言っていた。 真夏の照りつける太陽の中、汗だくになりながら坂道を登り切った。 3年間、この道を登るのは無理・・・。
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