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「痛っ!!」
沖田は刀を首筋に当てた。
「君、やっぱり間者じゃないの?皆を誘惑してそんなに楽しい?」
「ゆ、誘惑?」
「自覚がないなんて言わせないよ。男に女の武器を使うのは自由だ。騙される男も悪い。でも僕はこういうやり方は好きじゃない。」
雛には沖田の言っている意味が分からなくて、なぜ沖田にこんなことをされるのかが分からなくて涙が溢れてきた。
「…ひっく…ひっく……っ、もうやだ……沖田さん怖い……。私が何したの?」
「ただお風呂に入ってその帰りに土方さんにお礼を言ってただけなのに……。何でこんなに怒られなきゃならないの?」
涙と一緒にまだ濡れている雛の髪から雫が落ちて、その雫がポタポタと雛の着ている浴衣に染みてくる。
それを見て沖田は目を細めた。
沖田は刀を鞘にしまうと雛から手ぬぐいを奪った。
「ちょっとじっとしてて……。」
そう言うと沖田は濡れた雛の髪を優しく手ぬぐいで拭いた。
「じ、自分でできます。」
「黙って……。」
「……今度からお風呂から出たら走って真っ直ぐこの部屋に来ること!いいね!」
「……はい。そうしたら沖田さん怒りませんか?」
「お風呂のことではね……。でも僕は君のこと嫌いだから他のことでは分からない。」
「嫌われてることは百も承知です。私も沖田さんなんか嫌い……。」
「そう、ならお互い様だね……。」
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髪を乾かしたあと、泣き疲れて布団を敷いて眠っている雛の姿を見て沖田はため息をついた。
「本当に腹がたつ……。」
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