平助の恋

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おさよさんは私と沖田さんの手を見ていた。 きっとおさよさんには私と沖田さんが手をつないでいるように見えているはずだ。 おさよさんは私を睨みつけて怒鳴る。 「雛さんの嘘つき!!沖田さんに興味ないようなこと言ってたくせに!!沖田さんのこと誘惑してたのね!?」 「違います!!誤解です!!」 私が慌てて否定するけど、おさよさんは私の頬を思いっきり叩こうとする。 私は怖くて思わず目を閉じたけど、何の衝撃も伝わってこない。 恐る恐る目を開けると、片手でおさよさんの手を止める沖田さんの姿があった。 沖田さんは冷静におさよさんに言い放つ。 「おさよさん、僕がこんな女の誘惑に乗るとでも思う?僕を他の男と一緒にしないで。僕にだって選ぶ権利がある。」 「でもその手……。」 「ああ、これ?嫌がらせ。彼女も僕のこと嫌いみたいだから困らせてやろうと思って。」 「……そう…ですか……。雛さん、早く洗濯してください。さぼったら夕餉抜きですよ。」 おさよさんはそう言うとその場を去っていった。 「洗濯しろってさ!これで君の大好きな平助のところには行けないね。さてと、僕も稽古に戻るよ。」 沖田さんは私の手を離すと稽古場に行ってしまった。 「何だったの……一体……。」
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