平助の恋

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平助の部屋の反対側の廊下で、沖田は四人の様子を見ていた。 「総司、何を見ているんだ?」 「山南さん……。」 沖田は山南に目をやるとすぐ、平助に抱きしめられている雛の方を見た。 「雛ちゃんか……。総司は彼女のこと好きなんだろう?」 沖田の顔がぴくっと動く。 「僕が……?そんな訳ありませんよ。」 「平助が羨ましいんだろう?雛ちゃんに素直に優しくできて。私は知っているよ。総司がよく稽古の休憩中に、平助が雛ちゃんに優しくしているところを切なそうな顔をしながら見ているのをね。」 「僕は彼女のことが嫌いなんですよ。山南さん何か勘違いしていませんか?」 沖田がそう言うと山南が優しく笑う。 「土方くんは騙せても私のことは騙せないよ。総司は好きな子をいじめるような性格だから雛ちゃんに冷たい態度をとっている……。」 「好きな子には優しくしてあげないと本当に平助に取られてしまうよ。」 「……僕には山南さんの言っている意味が分かりません。」 そう言うと沖田は自室に戻っていく。 「彼女への気持ちを認めたくないのか……。」 ―――――――― ―――――― ―――― その日の夜、沖田はいつものようにお風呂から出てきた雛の髪を手ぬぐいで乾かしていた。 「沖田さん明日、斎藤さんと二人でお藤さんとおさよさんの買い出しの護衛当番の日ですよね?」 「うん……。」 「いいな……私も京の町を一度見てみたい。ほら私、ここに来てから一度も外に出たことがないから。」 雛がそう言うと沖田が雛の髪を乾かしていた手を止める。 「今度……」 沖田がそう言いかけると、部屋の外から藤堂の声が聞こえた。 「総司、雛、ちょっといい?」 沖田は雛の髪から手を離して襖を開けた。 「何?平助……。」
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