風紀委員3人に囲まれてるなんて、どんなけ鉄壁なんですかっ!

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 しかし、平和に帰宅しようと階段を下りて下駄箱のある一階へやってきた時、彼は偶然出くわしてしまう。  渦中のバンパイアに――  普通に自宅に帰ろうとしていた柘榴にしてみれば完全な不意打ちだった。  突然、女生徒の叫び声が聞こえる。  それはホラー映画などでよく耳にする鬼気迫った叫び声だった。柘榴は、人が本当に恐怖するとこんな声が出るものなのだと妙に感心してしまった。  柘榴が目にしたのは、見知らぬ女子生徒の上に男子生徒が馬乗りになっているところだった。 「はぁ。なんだよ。このべたな展開……。  おい!お前なにやってんだよ」  突然声を掛けられた馬乗りの男子生徒はビクリと体を強張らせると、こちらに顔を向けてきた。  少し長めの髪を神経質そうに掻きあげた男は、こちらを睨んでいる。  目は血走り、わずかに開いた口からは牙のように鋭く尖った二本の歯がむき出しになっていた。  柘榴は、なおも女生徒の上から動こうとしないメガネの男に言った。 「誰だか知らねぇが……お前ついてねぇよ……メガネ。今俺が一番ぶち壊したい代物をお前が掛けてるなんてよ」  柘榴は二人の元へと歩み寄る。 「あ。まさか、実はカップルの痴話げんかなんてことないですよね?」 「あ……あるわけないでしょう。は……はやく……早く助けてよぉ」  上に乗られて身動きの取れない女生徒が声を荒げた。  突然、その声に反応したバンパイア男は奇声をあげると、女生徒の上から柘榴の目の前まで突っ込んできた。 「んあ?」  柘榴は、常人場馴れした男の動きに驚いた。  一瞬で目の前に現れた男は、柘榴の顔面を殴りつけたのだ。 「痛ってぇ」  思わず後ずさりした柘榴との距離を詰めると、さらに追い打ちをかけるように右拳を突き出してきた。  しかし、柘榴はうまくその拳を掻い潜ると、フルスイングして動きを止めたバンパイア男に向かって自分の右拳を突き出した。 「なめんな。このひょろメガネがっ!」  カウンター気味に打ち出された柘榴の右拳が、男の顔面に迫る。  しかし、男に届くことはなかった。  拳がぶつかる直前に男は体を後ろに倒すと、くるりと一回転して躱したのだ。  まさか目の前でバク中するとは思わなかった柘榴だったが、さらにバンパイア男はその最中に蹴りをみまうという常人場馴れした動きを見せる。  その蹴りが、見事に柘榴の顎を捉えた。 「ぐがっ」
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