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◆プロローグ
前方の赤城、右の道無、後方の御堂。
これが俺の教室での座席配置だ。
前の席でさっきから爆睡している赤髪の少女。名前は赤城明日菜といって、ちょっとは名の知れた女だ。成績優秀、スポーツ万能、そのくせそれを嫌味に感じさせない物腰の柔らかさ。
天真爛漫というより天然と言う言葉がぴったりである。
しかし、それは彼女の一般的な顔でしかない。本当の彼女は生徒会直属の風紀委員会、通称W.W.Wのリーダーにして『風』を操るトンデモ少女なのだ。
そして、右隣の席で静かに本を読んでいる黒髪ツインテールの少女。道無涼音は、無口なうえに小柄な体格も相まってクラスでも目立たない控えめな女子だ。
それが彼女の表の顔。裏の顔は明日菜と同じくW.W.Wのメンバーで『重力』を操る。
最後に、後ろの席で優雅に佇む金髪の少女。御堂星(きらら)は、文字通り一般生徒とは毛並の色が違う超の付く大富豪のお嬢様なのだ。ふわふわの巻き髪に、透き通るような白い肌。
彼女の席からは白檀の官能的な香りがする。文句なしの人気ナンバーワン美少女だ。
そんな彼女にも裏の顔がある。二人と同様にW.W.Wのメンバーで『水』を操る能力者なのだ。
その三人に囲まれている俺は佐藤。三人に比べれば普通の苗字。しかし名前はちょっと変わっている。俺の名前は佐藤柘榴(ざくろ)だ。
表の顔は、成績も普通、スポーツも普通。特に目立つわけでもその逆でもない。ただの一般生徒。しかし、裏の顔は――
――と、そんなことを柘榴は考えてはいなかった。
なぜなら、彼は彼女達とまともに話をしたことも無い。従って彼女達の表の顔を知るただの男子生徒の一人だった。
彼女たちの正体を知り、事件に巻き込まれていくまでは――
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