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慌てて暗闇から抜け出した柘榴の視界には、白い肌を白桃のようにしたモデル体型の金髪少女がいた。スカートがめくれ露わになった細足が艶めかしい。
それを覗き込むような格好で、顔から鼻血を流す柘榴。
きゃーというお約束の展開が起こると、今度は柘榴の右頬が強打される。
ビンタされた柘榴の顔が水しぶきがあがる。
「水!?」
驚いた柘榴だったが、そのまま勢い余って右隣で本を読んでいる小柄な少女、道無涼音の方へと飛んで行った。。
こちらでもお約束の展開が待っているのだろう。もう、どうとでもなれ。
そう決心した柘榴だったが、道無は右手で本を持ったまま、空いた左手で飛び掛かってくる格好になった柘榴の全体重を受け止めた。
小柄な彼女からは想像もできないような強烈な力で、柘榴を床に叩きつけたのだ。
「ぐはっ」
散々ひどい目にあった柘榴だったが、追い打ちをかけるように
「お前ら。何を遊んでやがるんだ」
と担任が怒り出す。
「ふにゃ?」
「私は被害者ですよぉ」
「……私……何も……してない」
「俺だって被害者だぁ」
四者の四様の返事が響いた。
「お前ら。後で職員室に来い」
ざわついた教室が、担任の一声で静まり返る。
「ところで、明日菜。今何の話を俺がしていたか言ってみろ」
「う…………」
言い淀んだ明日菜に当てつけるように担任が話し始めた。
「……で、さっき話したことだが、聞いてなかった奴がいるようだからもう一度言うぞ。昨日うちの女生徒が放課後、廊下で襲われたそうだ。
お前達も一人で帰ることの無いように!」
明日菜が居眠りしていた間に話していた内容から補足すると、昨日の放課後に一人で残っていた女生徒が帰宅しようと廊下を歩いていると、いきなり後ろからガブリと首を噛みつかれたそうだ。
幸い、大事には至らなかったが、首に二つの傷穴が開いていたらしい。
◆
「なにそれ?バンパイア?」
担任にみっちり絞られた四人は職員室の前にいた。
話を聴いていなかった明日菜は、柘榴から細かい話を教えてもらっていたのだ。
「さぁな。まぁお前を襲うような奴はいないだろうけど、犯人が捕まるまでは早く帰った方がいいぜ」
そう言った柘榴に、
「はん。來るならきやがれってんだ。私が相手になってやるわよ」
そう息巻く明日菜。
「まぁ二、三日もすれば、うちの生徒会長が犯人を捕まえてくれるだろうぜ」
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