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柘榴は副会長の質問に素早く答えたが、答えられた彼はきょとんとした表情になった。
「なんだって?」
「だから、俺の名前は佐藤柘榴。明日菜たちと同じクラスの一年だ」
一瞬の間の後。彼はそれが柘榴の名前だということをようやく認識したようだった。
「俺は名乗ったんだぜ。アンタの名前も教えてくれよ。先輩?」
「悪いけど。一般生徒には、僕の名前を漏らしたくないのでね。答えたくはないな」
「ふざけんな。そんなもん各教室にいって、名簿なりあんたの友達なりに聞けばすぐわかっちまうだろうが」
不機嫌になった柘榴は、なおも食い下がろうとしたが、それまで黙って二人の会話を聴いていた無口な道無が言葉を挟んだ。
「伊藤副会長。早くしてくれない……このメガネが!」
伊藤って名前バラしてんじゃん。しかもさり気に毒吐いてるし……と、柘榴は思ったが、それ以上に道無が普通に人と話をしていることに驚いた。
道無の顔を眺めていた柘榴に、彼女が鋭い言葉でぶった切った。
「なに?じろじろ見ないで……豚に見つめられると……吐き気がする」
「えっと……どこから突っ込んだらいいのかな?」
柘榴の質問に道無は無視した。
「とりあえず。君は豚ではないよ……君は犬だ!」
「伊藤ちゃんはわけわかんないこと言ってないで、ちと黙っててくれよ」
伊藤副会長を制しようとした柘榴だったが、彼はさらに続けた。
「三回まわって、ワンと吠えろ」
「あ?」
突然、柘榴の左足に鋭い痛みが走る――
彼の左足には、伊藤副会長の細長い右足が突き刺さっていた。
スローモーションになった柘榴の目には、自分の左足だけでなく、右足も一緒に刈り取られるのが見えた。
視界に映る明日菜の顔が二転三転して百八十度反対向き、天と地がひっくり返った状態で止まると、今度は上へ落ちていく。
上といっても、天地が入れ替わった今の状態では、地の方向へ落ちていっている。
そして、脳天を貫く痛みと共に視界が暗くなった。
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