勇者の腕枕で アルマゲドン回避

3/13

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
シャーペンで、Lの字の図形を描いたあと、右側の角っこをぐるぐるマークして、 『1階生活指導室』と書いて、あたしに手渡した。 夕暮れの校舎は、なんだか懐かしかった。 窓から、野球部と陸上部が頑張ってるのが見える。 平和な日本の放課後の光景。 「おー、いい汗かいてるねー」 立ち止まって眺めていると、 どこからか、吹奏楽部の楽器の音。 生活指導室とやらのドアをガラリと開けると、誰もいなかった。 小部屋に、先生のデスクに肘掛の付いた椅子、生徒用の折りたたみ椅子が置いてあった。 わあ、説教部屋みたいな感じ、とニンマリ。 薄暗い部屋に佇む。 窓から差し込むグレープフルーツ色の陽光があたしのボブヘアーを銀色に輝かせる。 うっとりするほど綺麗だ。 毛根から金髪に染めたそれは、夏の陽射しと溶け合い、完全に自分の色を失っていた。 「すまん、遅れて」 背後で声がして、振り向くと担任の鈴木カズミチがいた。 カズミチは体育教師で、サッカー部の顧問をしている。女生徒に人気があるらしい。 白いTシャツに青いアディダスのスボンを履いていて、なぜか手には、黄色いプラスチックのメガフォン。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加