勇者の腕枕で アルマゲドン回避

8/13

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
透き通った茶色い虹彩の瞳に、わがままでだらしない、あたしが映る。 ーーーお前となんか、遊びだったんだよ。 誰かの声がしたと思った時、 腹の底の正体不明な何かが、ぐぐっと内臓を突き上げ、暴れ始めた。 あたしの身体を大きく上下に揺らし、口から外へと飛び出したがっている。 吐き出したいっ…… あたしは、手で口を覆う。 あ、もう…我慢できな…! 「うわーーーーん!」 「….お、おい、そんな痛かったか?」 腰を浮かし、オロオロするカズミチ。 「痛くないよー、もうやだあー!なんでこうなるのー!わーん!」 鼻水も涙もどうでもいい。 とにかく今は、なんかワケのわからないムヤムヤを、大きな泣き声で追い出したかった。 「悪かったよ、泣くなよ…」 カズミチの大きな手が、あたしの頭を撫でる。 「カズミチって、呼んでいいから…」 「やだやだやだやだ…」 頭をぶんぶん振ってなきじゃくっていると、ふわり、とあたしの身体が温かいもので包み込まれた。 柔らかい真綿のようなそれは、カズミチの腕だった。 嘘みたいに簡単にあたしの涙は、ぴたりと止まる。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加