15人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
それから毎週土日の朝、マリエは仕事の始まる前に「ロミオ」に寄ってくれるようになった。
俺は、銀のトレイを持ち、彼女に白いティーカップを捧げる。
…心に秘めた愛情も一緒に。
あなたは太陽だ。
触れられない禁断の果実だ。
「いい香りだわ」
湯気の立つ、琥珀色の飲み物。
真紅の唇。不埒な想像。
叶わない欲望。
マリエが帰った後、ティーカップに薄っすらと付いた紅い痕跡に、俺は自分の唇を押し付けてみる。
あなたに触れたい……
2人で、熱いシャワーを浴びたあと、水滴が付いた身体のまま、飛び魚になって、大きなベッドの上で跳ねてみたい。
内面は、そんな思いではち切れそうになりながらも、表面上は爽やか高校生を装った。
「部活何してるの?」
「…なんもしてないす」
「へえ、帰宅部なんだ」
「…野球やってたんすけど。かったるくなったんで」
くそ。もっと気の利いた、受け答え出来ねえのか、俺。
「そおなんだ?」
クスクス笑う。
「じゃ、彼女と自由にデート出来るね?」
イタズラっぽい瞳。
「いや!そういうのいないす、マジないす!」
自分でも、みっともない、と思うほどムキになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!