人妻と、飛び魚と、 真夏の果実

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返事をすぐにしなかったので、誤解されてしまった。 「い、いやっ…!」 焦ってしまい、俺の喉からは裏返った声が出た。急いで咳払いをした。 「…んん、それは絶対違うって。いいよ。いいけど…」 クス。 オカマみたいな俺の声がウケて小沢の口元が緩んだ。 救われた気がして、俺も笑いながら、言葉を続ける。 「用があるから夜9時以降なら、いいよ。公園に着いたらメールするよ」 俺は一旦帰宅し、私服に着替えた。 ストレートのジーンズに、白いシャツ。これにグレーのジレなんか合わせてしまう。 胸元は少し開けて、シルバーのネックレスを光らせる。 ファッション雑誌で研究したスタイルで出掛ける先は駅前通りにある『オデオン座』。 俺の目的は、マリエに会う事だ。 会うと言っても約束してるわけじゃない、俺が一方的に押し掛ける形だ。 歩きながら、思い出す。 今日の昼休み。 俺はついに親友の篠田に、マリエのことを話した。 「そこらの若い女より、マリエは魅力的だ。 年の差なんて、糞食らえ。 彼女には包容力ある。 海だ。或いは大きな湖。 その適度な温度の水の中に、身を委ね、ひたすら溺れてみたい…」
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