人妻と、飛び魚と、 真夏の果実

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「そうでもねえよ」 俺はそっけなく、顔を背ける。 …ぶっちゃけ、バイト代、ほとんどぶっ飛んだ。 「じゃ、映画観てくるから」 「ありがとうね、藤枝君!」 マリエの甘ったるい声を背中で聴いた俺は、満足感で一杯だった。 だいたいの結末が分かったところで映画を切り上げ、ロビーに出た。 売店にマリエの姿はない。代わりにおっさんがいる。 少しだけでもいいから、話をしたかったのに…残念。 ま、いいや。寝る前にメールしよう。 外に出ると、もう真っ暗だった。 小沢との9時の約束が、遅れ気味だ。俺は急いで公園に向かった。 薔薇の花束、喜んでくれたかな? マリエの驚いた顔を思い出す。 我慢し切れず、俺は、スマホを取り出し、愛しい女のアドレスを引っ張り出す。 [驚かせてごめん。今夜のマリエ、すごく綺麗だった] 送信。 すると、すぐにスマホが震え出した。 こんなに早く返信くれるなんて… 俺からのメールを待っていてくれたのかな? きっと薔薇のお礼だろう… 「う…」 画面を見た俺は立ち止まり、愕然とした。
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