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誰もいなくなったシアター。
ここがなくなったら、私はどうすればいいんだろう?
真っ暗になったスクリーンを見つめながら、途方にくれていたその時。
重たいドアーが開いて、人が入ってきた。
匂いだけでわかる。
この「オデオン座」の支配人、城島雅治だ。
彼はいつもラベンダーの香りを纏っている。
ゆっくりと、はじの階段を降り、スクリーンの中心に立った。
座席側の方を向いて、目を閉じる。
目に映っていた情景を脳裏に焼き付けるように。
この小さな映画館との別れを惜しむように。
寂しいよね。私も切ないよ。
出来ることなら、あなたのそばに行って、あなたを抱き締めてあげたい。
でも、出来ない。
私の手は生体を掴むことが出来ない。
ホログラムの映像のように、すり抜けてしまう。
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