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私は、33年前、17歳の時に肉体を失った。
同級生の城島君とこの映画館でデートをしたあと、自宅の団地の共同階段から転げ落ちたせいで。
最初は受け入れられなくて、泣きわめいたりしたけど。
形は無くなっても、私の意識は、あたりを彷徨う。
なのに両親も。兄も。友達も。
誰も、私に気付いてくれなかった。
煙みたいになった私は、人生の中で1番幸せな思い出がある「オデオン座」に住み着くことにした。
ここなら、大好きな映画が毎日見られるから、寂しい思いをすることもなかった。
そんなある日。
大人になった城島君が突然、オデオン座に現れた。
彼は、この映画館の若き支配人に治まったのだ。
その日から、私は、オデオン座だけでなく、彼のことも守るようになった。
それなのに。
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