ベテルギウスの幻影

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「…生まれ変われないか?俺の子供に。そしたら、君を永遠に愛することが出来る。 男とか女とかじゃなく」 「そんなシステムあるのかしら? よく分からないな」 私はクスリと笑った。 もう、とっくに失恋なんだけど、私はあなたに、女として心に残して貰いたかった。 しばらく、沈黙が続いた。 「マナミは覚えてるかな?昔、2人でオリオン座を観たことがあったよね」 「うん。すごく寒い日だったよね」 忘れもしない。 今のように、携帯電話なんてない時代。 城島君は、土曜日の夜8時にうちに電話を掛けてきた。 マナミ、男の子から電話だよ、とお父さんが部屋にいた私を呼びに来た。 ちょっと気まずかったな。 冬の大三角形を見ようという城島君からの誘いで、深夜になるのを待って、私はこっそり家を抜け出した。 城島君が夜の公園で、オリオン座のベテルギウスを教えてくれた。
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