ベテルギウスの幻影

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「640光年って、どういうこと?」 「光の速度で到達するまで640年かかるってことだよ。途方もない時間だ」 今は、もうない残像。 変わっていないと思ったけれど、目の前の城島君は、あの頃とは違う。 「そうなの?…私、確かめてくる」 私の体は、ふわりと宙に浮き上がり、上昇し始めた。 城島君を見下ろし、オデオン座の屋根を突き抜ける。 こんなに高く舞い上がったのは、初めてだ。 でも、怖くはない。 白いレースの裾が、夜風にひらひらと翻る。 オデオン座のある街並みを一瞥してから、群青色の夜空を見上げた。 まずは、大きな真珠みたいな月を目指して、進んでいこう、と思った。 「ベテルギウスの幻影」 fin
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