CLUB ビシャス

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高校時代の彼女はタトゥーなどするようなタイプではなかった。顔立ちは大人しげで、絹みたいなサラサラヘアと鈴を鳴らすような声。 細くて、か弱そうで、山咲沙織はそよ風に揺れる可憐な花のような少女だった。それでいて人懐こい性格。 男がほっておくわけがない。 同じクラスになった高1の春、新入生の癖に彼女はすぐに先輩と付き合い始めた。ちぇ、なんだよ、つまんねえ、とブツクサ言う男子は1人や2人ではなかった。 俺は水泳に夢中だったから、そんな愚痴を笑って聞き流していた。 本当に興味なかった。 でも、俺が2年の夏。受験のために水泳部を辞めた頃、山咲沙織に校舎裏に呼び出された。 進級してからクラスが別々になり全く喋ってもいなかったから、意表を突かれた気持ちだった。 五島君、わたしと付き合ってくれませんか? 切れ長の瞳で、真っ直ぐに俺を見て告白された。本当に素直な言葉での求愛。 その当時、俺にはあやふやな関係の女友達がいた。 同じクラスの原田由紀子。時々メールしたり、買い物に付き合ったり。原田を好きになりかけていた。
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