CLUB ビシャス

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沙織との交際は、その映画を観た三週間後に終わった。あっけなく。スイッチを切るように。唐突に。 五島君ていつも上の空ね。 私のこと見てない。 誰もいない校舎の廊下で、沙織はそう言ってから駆け出し、俺とのメールを絶った。 突然過ぎて、何がなんだか分からなかった。というものの、沙織の言うことも分かる気がした。 沙織のことは確かに好きだった。何回か誘われるようにしてキスもしたのに、なぜか自分の彼女って気がしなかった。 そして、すぐに沙織は他校の背の高い男と付き合い始めた。 そいつは毎日うちの学校の校門の前で沙織を待ち伏せし、合流して下校した。 2人は自然に手をつないでいた。 俺がいる前でも平然と。 やはり沙織は彼女なんかじゃなかった。 沙織は小鳥だ。 気まぐれな小鳥が羽休めのためにお気に入りの木の枝でいっときを過ごし、また新たな安息の地を求めて旅立っていった。ごく自然なことだ。 傷付くようなことでも暗く考えるような事でもない。ごく自然なことだ。 沙織のことをそう考えるようにしたら気が楽になった。 そのおかげで俺は大学受験に集中出来たんだ。
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