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「…なあ、まさみ」
「ん?」
「俺らがさ、幼稚園の年長だった頃した約束って覚えてる?」
夜風に哲也の前髪が優しくなびく。哲也の大きな二重まぶたの瞳にいくつかの灯りが灯っている。
少し目が潤んでいるみたい。
「ん…新しい折り紙買ったら取り替えっこしようとか?」
「だー!違うって。そんなんじゃねえし。ヒント。七夕パーティーのあとだよ」
「七夕…あー、私が織姫で哲也が彦星で劇やったよね…」
「そうそう。あー、じれってえなあ。酔いに任せてぶっちゃけるわ。
七夕の劇のあと、まさみが大人になったら、てっちゃん結婚しよって俺にいったの。
そんで俺がいいよって答えて、じゃ約束ねって教室の隅で指切りしたの!」
ほろ酔いかつ、バルコニーが暗かったから、哲也はこんな話出来たんだと思う。
なんておませでかわいいエピソードなんだろう。なんか笑いがふつふつこみ上げてくる。でも…正直、私、覚えてない。
結婚しようなんてセリフは社交辞令みたいなものだと思ってる。何人かに戯言みたいに言われたことあるんだけど。
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