Be My Lover

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「うーん、なんとなく覚えてるけど」 気まずくなりたくなくて、ちょっぴり嘘を吐いた。けど、哲也はお見通しだった。 「嘘つけ!」 バルコニーの柵に両手をかけてガックリと首を垂れた。 「はあ…やっぱりかあ。俺はこの歳まで時々思い出してたんだよなあ。 だから再会した時、あー、これは運命だなって嬉しかったのに。 まさみはモテるからなー。覚えてるわけねえよなあ、忘れちゃうよなあ…」 うそ…山口でも私のこと思い出してくれてたの?哲也って純情なんだね。汚れきった私とは対照的だ… 「ごめんね。でも、素敵な話。なんか感動しちゃったよ」 なぜだか涙が出そうになってきた。 じわじわ潤んだ目に光る東京タワーが霞んでうつる。 「まあ、この話は忘れてくれよ。そろそろ帰るわ。終電混むからさ。これからもまさみにとって良い相談相手になるよ。じゃな。東京タワー見れて良かった」 「待って!」 とっさに哲也の腕を掴んでいた。 このまま帰したくなかった。 「ね、泊まっていきなよ?」 「…はあ?」 哲也が目を丸くした。すぐに厳しい顔になった。 「シングルユースで予約したんだろ?ダメじゃん!」 現実的なところを突かれて、私はもじもじした。 「実はね、クリスマスイブに高級ホテル一名分で予約なんてかっこ悪くて出来なくて。カップルプランで予約いれたの。お兄ちゃんの名前借りてね。だから大丈夫…」 「あー、だからベッドに新婚さんみたいな飾りなんだ!でも、マジいいの?」 「うん。いまさら電車乗って帰るの面倒でしょ?」 私の質問には答えることなく、哲也が私の方に手を差し出し、髪を撫でて始めた。 幼馴染が男に変わった瞬間。 「ずっとお前が好きだった。朝の東京タワーを一緒に見よう」 「…いいよ。その代わり、今からわたしの彼氏になりなさいね?」 「すっげー上からだな。まさみらしいわ」 満天の星空のような眺めを背景に、哲也がクスクス笑いながら私を抱きしめる。 今までの人生の中で、一番想い出に残る夜景なるといいな。 グッドナイト、東京タワー。 今夜は羽毛布団に包まって寝るね。 【完】
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