儚き露

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暗がりの中、ダイニングテーブルに置いたリコモンのボタンを手探りで押す。 すうっと部屋の中が明るくなる。 だが、誰もいない白々とした部屋は主の帰りをあまり歓迎していないように思えた。 3日ぶりの我が家だというのに。 心底疲れていた。腕時計を外し着替えもせず、ネクタイを少しだけ緩め、ソファの上に横になる。 時刻はもう午前1時を過ぎていた。 空腹はもう感じなかった。 ひどい事件だった。 22歳の風俗嬢がマンションの自室で絞殺され、その遺体が雑木林に遺棄された。 これといった証拠もなく、防犯カメラはどれも不鮮明で初動捜査からつまづいた。 それでもひと月もすると同じマンションの住人が滞納していた数ヶ月分の家賃を一括で支払ったという情報が入る。 被害者の隣室に住むその若者にはすでに聞き込み済みだった。事件の夜は実家に行っていたという話だった。 3か月ほど前に越してきた被害者とは面識がないと言っていたのだが、再度の大家への事情聴取で二人の間に生活音トラブルがあったと分かった。 (若者が謝り事態は収まったという話だった) 若者の嘘が発覚したのがきっかけで、この強盗殺人事件は解決へと大きく動き出した。 俺は連日、若者を取り調べ、事件当日のアリバイの虚偽を暴き、ついに自白へと追い詰めたのだった。 「金が欲しかった。殺すつもりはなかったんだよ」とごく普通の外見の殺人犯は弱々しく言った。
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