儚き露

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スマホが鳴った。 また美咲か… 手に取る気はなどなかったのに勝手に腕が動いていた。 中野のえる、という名前が浮き上がっていた。風俗嬢強盗殺害事件の舞台となったマンションの大家の孫娘。 大事なマンションの資産価値が下がることを恐れて、事件直後何も語ろうとしなかった女主人には舌打ちしたい気持ちが今も残る。 捜査が煮つまり、再びの聞き込みのため訪ねた俺に対応してくれたのが、のえるだった。 ロングの茶髪で人懐こいのえるは刑事である俺に興味津々だった。 すごい、お兄さんかっこいいと無邪気にはしゃいだ。 そして、おばあちゃんには聞かれたくないから場所を変えて欲しいと言われ、ファミレスに行った。 のえるは席に着くなり、お腹空いたと言い俺に奢らせる気満々でオムライスをオーダーした。 「あ、こういう時はカツ丼かな?」 戯けるのえるを俺は軽く睨んだ。 するとのえるは反省したように態度を正し、語り出した。
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