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それから和也はその名の通り、俺の一番の友達になるには時間はかからなかった。
大体専攻している授業は似ているため、しょっちゅう会うし、控えめな俺とは反対に和也はまるで犬ころのように俺の元へとやってきてはくだらない話をしてきた。
こんなに人懐っこいのに友達少ないなんてと思っていたが、それは真っ赤な嘘で和也には沢山友達がいた。
「この嘘つき目…」
俺の席に腰かけているこいつを早くどかしてくれと目で訴えてみるが全く気付く様子もなく今日も集まってくる友達と楽しそうに話している。
毎日の事で慣れては来たが俺はこいつと友達で良いのかと疑問に思ってしまう。
こんな田舎者の友達などいらぬのではないだろうか…そればかりが頭をよぎる。
だが、やつは本当にいいやつなのだ。
「お前らもう帰れよ。俺の可愛い拓也が困っている」
可愛いと言うのは聞き捨てならなが、最後には俺を優先してくれる。
それに、一人暮らしでは金銭面でかなりキツイ状態だった俺に一緒に住もうと誘ってくれたのも和也だった。
俺は、最初は遠慮して断っていたが最終的に
「俺がお前と暮らしたいの」
という一言でおちた。
だが、俺には問題をいくつも抱えている。
あの何とも面倒な癖があるからだ。
それを和也に話したら嫌われるかと思ったが一緒に暮らすとなると話さなければならない。
そして勇気を振り絞り話したら、
「あっそ。いんじゃねえ?面倒なら俺は会わせないし、面倒じゃなければ俺は合わせるから気にすんな」
と言われた。
イケメンな上に、性格までイケメンだと俺はこのときばかりは泣いてしまった。
俺の性格を理解してくれるのは直人だけだと思っていたが、正直その言葉はありがたかった。
俺は自分のこの癖でまわりに迷惑をかけるのが一番嫌なのだ。
母親は弟もめんどくさそうに合わせてくれているがそれは家族であって、他人は別物だ。
父親に人様には迷惑をかけるなと散々言われていたためそれだけは避けたかったのだが、和也は俺を受け入れてくれたのだ。
「お前泣き虫なのな」
そうしてひょんなことから、ルームシェアをすることになった。
それから一年後…そんな生活は呆気なく幕を閉じる。
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