毒リンゴ

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 次に間違っていたのは、安治君が私を好きだと思っていたことだった。それは、私の一方的な勘違い。シャッターを押した時、安治君は頬を赤めて私の方を向いたのではなく、一緒にいた友達の方を見ていた。それを、私が勝手な勘違いで自分のことだと思ってしまった。安治君は、私の入院をキッカケに気落ちしていた友達に、告白してしまい、私の方なんか振り向いてもくれなかった。  でも、そんなことは、今となっては小さなことだ。私がもっとも、大きな間違いを犯していたことがある。それは、あの時、部屋にやってきたのは妖精ではなかったことだ。思い返してみれば、妖精は一度も、自分が妖精だとは名乗っていなかった。  妖精の正体は悪魔だった。私のような軽率な人間をたぶらかして、困っている様子を見ては笑っている。だから、悪魔は私から見返りを求めなかった。消える時、微笑んでいた。  私は、悪魔を殴ってやりたかった。だけど、それは身体が動かせない以上、どうすることもできない。意識を失ったままの状態では、誰かを愛することも、愛されることもできない。生きているのに、死んでいるのも同じ。こんなことなら、いっそのこと意識など本当に無くしてしまった方が、どれだけ良かったことか。これも、悪魔の考えの内だったのだろう。  私は歯がゆく、歯軋りをしたかったけど、それすらもできない。
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