毒リンゴ

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 私は自分の部屋に閉じ籠もり、一人思いにふけってた。 「ああ。安治君」  私の手元には、一枚の写真がある。修学旅行の時に、友達と一緒に撮った何気ない写真の一枚。その中に、私の思い人である安治君が写ってる。  友達は私が安治君のことが好きなのを知っているので、私はよくこの写真をネタに茶化された。 「明美、良かったじゃない。安治君よ。安治君が写っているわ」 「ホント、偶然とはいえ、明美がシャッターを押した時に安治が写るなんて」  友達は口々にそう言ってきた。私は偶然とは思わなかった。写真に撮る瞬間、安治君は私の方を向いてくれた。写真にはその時、ほんのり頬を赤くしている安治君の姿がハッキリと写っていた。 「きっと、私に気があるんだ」  私は人には見せられないほどに、頬が緩んでニヤけていたことだろう。だって、安治君とラブラブな姿。それを妄想しただけで、心が満たされる最後は気恥ずかしさのあまり、ベッドに飛び込みマクラに顔を埋めた。 「本当に、安治君とラブラブできたらいいのにな」  少し落ち着いて、私は現実を見つめ直した。いくら、互いに好意を寄せあっていても、距離が詰められない以上、これ以上の進展は望めない。思い切って、告白をしてしまえばいいけど、私にそんな勇気なんてない。だって、安治君のことを思っただけで。やっぱり、恥ずかしくなる。きっと、今の自分はリンゴのように真っ赤っかなんだろうな。 「そんなに、彼の愛を知りたいの?」 「うん・・・え?」  私は顔を上げた。ここには、自分しかいないはずなのに、どこから別の人の声が聞こえた。思わず、返事をしてか気付いた。 「誰・・・・なの?」 「どこを、探しているのよ。こっちよ。こっち」  空耳ではないみたい。私はニヤけていた自分の顔を正しながら、声が聞こえた机の方を向いた。 「はい。こんばんは」  机に置かれた参考書に小さな人が座っていた。青やピンクが混じり合ったような半透明の綺麗なワンピース、背中には蜻蛉のような羽根が生えている。それは、昔、絵本でみた妖精の姿、そのものだった。
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